まず押さえる要点
NSW の Section 78 通知は、保険会社(保険者)の正式な責任判断です。単なる不承認連絡ではなく、週次給付・治療・就労能力の争点を同時に固定しやすい文書です。通知の法的断言と事実断言、証拠ギャップを分解してから動くことが重要です。
先に守るべき重要ポイント
- 保険会社(保険者)が何を否認しているかを先に特定する。
- Section 78通知は、給付減額・停止や治療拒否の起点になり得る。
- 反論は感情ではなく、通知理由に対応する証拠で行う。
- 要件を満たせば IRO(Independent Review Office)支援で費用負担を抑えられる。
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Section 78 の法的意味
Section 78 では、保険会社は決定内容・理由・依拠資料を書面で示す義務があります。理由不備や論理飛躍は、それ自体が争点です。
実務上、通知には最低でも 1) 決定内容 2) 理由 3) 根拠資料一覧と主要医療報告書写し 4) 再審査・紛争手続案内(期限)が必要です。
この通知は書面再審査(書面レビュー)、就労能力レビュー、PIC申立ての順序に直結します。初動で読み違えると後工程が遅れます。
派遣・下請け・複数雇用の案件では、先に引受保険会社を特定し、必要資料を一括請求してください。
通知受領後 7 日間の実行(口頭対応だけで止めない)
最初の 24 時間:通知本文・添付資料・請求記録・賃金資料・就労能力証明を保全し、受領時刻と減額/停止発効日を確定。
1-2 日目:法的断言 / 事実断言 / 医療断言を分離し、各断言に『既存証拠・不足証拠・補完担当』を紐づけて論点を固定。
3 日目:争点表・不足資料一覧・文書開示要求を含む書面対応の第1版を提出し、口頭中心の流れを断つ。
4-5 日目:主治医・専門医に機能制限、業務不適合、因果関係、時系列を明示した補足意見を依頼(「働けない」だけでは不十分)。
5-7 日目:書面再審査、IRO 支援準備、PIC 予備準備を並行開始。電話回答待ちにしない。
7日目まで:『次の期限マップ』を1枚で作成し、书面复核期限、PIC申立て準備節目、主治医補足意見の提出日、担当者、代替プランを固定して時系列崩れを防ぐ。
『レビュー線(法的対応)』と『生活維持線(週次給付・治療)』を同じ進行表で管理し、毎日、証拠番号・次の期限・担当者を更新して分断を防ぐ。さらに同じ表に『次に開くページ』を明記し、責任線は請求否認ガイド、給付線は週次給付停止ページ、治療線は治療拒否ページ、就労能力線は就労能力争点ページへ即時接続できる状態にしておく。
現場で崩れやすい3つの局面(先に判定してから動く)
局面A:電話で保険会社の説明が変わる。対応:24時間以内に要点確認メールを送り、『それが正式見解か』を明示回答させる。未確認の説明で証拠優先順位を変えない。
局面B:主治医は協力的だが記載が抽象的。対応:insurer通知の該当文を渡し、各論点ごとに『診断→因果→機能制限→職務影響→推奨期間』を書いてもらう。
局面C:給付減額と治療停滞が同時進行。対応:その日のうちに生活資金・治療継続・法的レビューを同一アクションボードへ統合し、次回送付日を固定する。
よくある4類型の争点
責任争点:業務起因性の否定、または worker 該当性の否定。
既往症/退行性争点:症状は認めつつ、業務による実質的増悪を否定。
治療争点の抱き合わせ:一部認容しつつ手術・心理治療・画像検査を拒否。
就労能力・給付戦略:「適合就労」論で後続の減額/停止に接続。
対応が不利になる典型パターン
結論だけを争い、通知が指摘した証拠ギャップを埋めないまま進めてしまう。結果として insurer は同じ否認理由を 书面复核 と PIC でも反復し、ファイルが固定化します。
診断書が抽象的なまま提出される。『就労不可』だけでは足りず、機能制限・許容作業・症状変動・職務不適合・因果の流れまで具体化しないと、反証として弱いままです。
責任・週次給付・治療を別案件のように処理し、証拠の整合性を失う。責任線では重症を主張しつつ、給付線では軽い資料しか出ていない、という矛盾が起きやすくなります。
電話連絡に依存して重要点を書面化しない。通話後24時間以内に確認メールを残さないと、後の審理では 保険会社側の記録だけが事実として扱われやすくなります。
Section 39、WPI、serious injury の中長期設計を後回しにする。目先の否認対応だけで終えると、130週付近や閾値争点で準備不足が表面化します。
期限管理が散在し、review期限・主治医補足意見日・資料請求期限・PIC準備日程を一枚のタイムラインで管理していない。これが実務上もっとも多い遅延要因です。
次に進む最適ルート:争点別の最短動線
業務起因性否認が中心:『請求否認の総合ガイド』+『既往症・退行性争点ガイド』で時系列と因果を再構成。
就労可能性主張が中心:『就労能力決定の争い』と『週次給付が止まったとき』を並行し、収入悪化を止める。
一部認容+治療拒否:『治療拒否への対応』で「合理的かつ必要」立証を補強し、PIC 用資料を同時整備。
IME 依拠が中心:『不公正な IME 報告への対応』で項目別に反証し、再審査/PIC で不利記載の再利用を防ぐ。
期限管理と戦略タイミング(Deadlines and strategic timing)
Section 78 案件は法的主張だけでなく、期限管理の精度で勝敗が分かれます。再審査節目、主治医補足意見日、資料請求期限、PIC準備を一つの時系列に統合してください。
24時間以内に通知一式と根拠資料を確保、72時間以内に理由別の書面対応計画を提出、7日以内に再審査とPIC準備日程を同じ証拠カレンダーへ固定するのが実務的です。
週次給付や治療が同時に悪化している場合は、書面再審査とPIC準備を直列ではなく並列で進めるほうが損失を抑えられます。
3段階の紛争動線:資料確保→反証構築→エスカレーション判断
第1段階(通知読解と資料確保):Section 78通知を文単位で争点化し、保険会社が依拠した報告書・クレームノート・文書索引を一括請求して、資料不足のまま反論しない。
第2段階(反証構築):争点ごとに主治医/専門医意見、賃金・職務資料、重要連絡ログを紐づけ、結論ではなく断言単位で反証する。
第3段階(リスク基準で並行処理):週次給付や治療が悪化している場合、書面再審査・IRO準備・PIC準備を直列にせず同時進行で設計する。
推奨ルート:書面再審査 → IRO 準備 → PIC
Step 1:通知と証拠パックを精査し、覆すべき核心断言を定義。
Step 2:断言ごとに証拠マトリクスを作成(主治医、専門医、賃金、職務、連絡記録)。
Step 3:書面再審査と IRO 支援準備を並行実行。
Step 4:必要に応じて PIC に進み、就労能力・週次給付争点も同時処理。
Step 5:全工程で『書面ログ規律』を維持し、電話後24時間以内の確認メール、添付番号、日付統一を徹底して審理で再利用可能な記録を残す。
実務の強化ポイント:『レビュー線』と『生活維持線』を同じ実行表で管理する
多くの案件は法的論点より運用分断で崩れます。法務側は再審査、本人側は週次給付、医療側は治療承認だけを別々に追うと、証拠整合性が落ちます。責任争点・給付回復・治療継続を1枚の実行表で一体管理してください。
実行表には最低でも、争点ごとの必要証拠、提出日、担当者、通話後24時間以内の書面確認ログ、次の期限トリガーを入れます。PICに進んだ際も、場当たり反論ではなく継続的な補証運用を示せます。
電話で新しい否認理由を示された場合は、24時間以内に確認メールを送り、それが正式立場か明示回答を求めます。確認されていない口頭説明で証拠優先順位を変えないことが重要です。
初回の書面回答テンプレート:1ページでも“審理可能”な形にする
初回回答は『本文1ページ+添付一覧』で十分です。通知日、争点番号、各争点に対応する証拠番号、保険会社に求める回答期限を先に固定してください。
本文には最低4点を入れます。①不同意とする具体的断言 ②現時点の反証 ③追加提出予定資料 ④次の手続(書面再審査 / IRO / PIC)の予定日。これで“感情的反論”扱いされにくくなります。
提出メールの件名は『請款編號 + Section 78 回覆 + 日期』で統一し、24時間以内に受領確認を取る運用を徹底してください。後の review / PIC で時系列を立証しやすくなります。
分岐実行マトリクス:今日どの線から着手するか
同じ週に責任争点、週次給付リスク、治療遅延が重なる場合、1本ずつ順番待ちにしないでください。まず当日の最優先リスクを決め、担当者と送付期限を明記します。
責任線:『請求否認の総合ガイド』へ接続し、保険会社の各理由を今週提出する証拠番号に1対1で対応させます。
給付線:『週次給付が止まったとき』へ接続し、法的主張だけでなく生活資金の連続性と証拠整合を同時に守ります。
治療線:『治療拒否への対応』へ接続し、主治医意見で「合理的かつ必要」の拒否理由を項目別に潰します。
就労能力線:『就労能力決定の争い』へ接続し、証明書文言・実職務・保険会社の説明を突き合わせ、「適合就労」の単線化を防ぎます。
どの線を先行しても、当日中に4線の現況と次回期限を1通でまとめた書面更新を送ってください。後続手続でのバージョン衝突を避けられます。
エスカレーショントリガー・ラダー:待機をやめる基準を先に決める
Section 78案件が崩れる典型は、証拠不足より『まだ返答が来るはず』という待機です。先にエスカレーション基準を1枚に固定してください。
トリガー1(24時間):電話説明が変わったのに書面確認が来ない——同日中に時系列確認メールを送り、対照表を更新します。
トリガー2(72時間):核心理由や必須資料が未提示のまま——書面再審査要求を提出し、番号付き証拠索引を添付します。
トリガー3(7日):責任・週次給付・治療の主要争点に実質修正がない——書面再審査を継続しつつ、PIC提出ファイルを『準備中』から『実行中』へ切り替えます。
各トリガーには日付・担当者・代替アクションを明記し、口頭フォロー待ちの無期限化を防いでください。
48時間の資料請求パック:保険会社の根拠資料を先に取り切る
Section 78対応で崩れやすいのは法理ではなく資料不足です。最初の48時間で、項目番号付きの資料請求書を1通送ってください。
最低6項目を請求します:Section 78通知本文と全添付、依拠したIME/専門医報告(紹介状の質問文含む)、決定期間の理賠紀錄抜粋、週次給付/PIAWE算定内訳、治療拒否理由と内部レビュー記録、現在の担当者と回答期限の書面確認。
『確認中です』という口頭回答だけなら、あなたの項目番号に沿って書面回答するよう求めます。review/PIC段階で、未開示資料と未回答争点を明確に示せるようになります。
最初の72時間チェック:良い案件を崩す4つの運用ミス
ミス1:電話での合意を24時間以内に書面化しない。結果として 保険会社側記録が先に正式版になります。
ミス2:医師意見が結論だけで、作業レベルの制限(座位時間・持上げ重量・立位耐性)が書かれていない。「適合就労」論が通りやすくなります。
ミス3:責任線・給付線・治療線で別々にメールを送り、添付番号が不一致。review/PICで同一事実が多重化して信用を落とします。
ミス4:催促だけして、未回答時のエスカレーション日を設定しない。各文書に『この日までに未回答なら 书面复核 / PIC準備へ移行』を明記してください。
PIC申立て準備インデックス:半日で作る実務ファイル
エスカレーションの可能性がある案件は、直前になって資料を寄せ集めないでください。先に統一インデックスを作ると、弁護士・主治医・保険会社で時系列が揃います。
推奨フォルダは5つです。A(Section 78通知と全返信版)、B(日付順の医療資料)、C(週次給付とPIAWE算定資料)、D(治療申請・拒否の往復文書)、E(通話後24時間以内の書面確認ログ)。
最後に1枚の索引表を作成し、文書名・日付・対応争点・次の担当者を記載します。review/PIC段階ではこの索引がそのまま提出目録になります。
叙述ドリフト対照表:保険会社の論点ずらしを先に止める
Section 78案件が複線化すると、同じ争点がメールごとに別表現へ置き換えられるのが典型的な失敗です。初回回答から“対照表”を1枚運用し、毎回更新してください。
対照表は4列が実務的です:保険会社の原文主張(ページ参照)/あなたの反証資料IDと日付/未解決ギャップ/次アクション担当者と期限。review・PIC移行時に、同一事実軸で補証してきたことを即提示できます。
主治意見・賃金資料・治療申請を追加提出するたびに対照表も更新して送付し、保険会社が電話で理由を変えた場合は同じ番号体系で書面回答を求めてください。口頭だけの変更を新事実にさせないことが重要です。
主要法令・参照基準
Workplace Injury Management and Workers Compensation Act 1998(NSW)s 78:通知に検証可能な理由と根拠資料が必要で、反論設計の起点になります。
SIRA ガイドライン:保険会社の手続運用、証拠参照、説明義務の適合性を確認する基準です。
Personal Injury Commission(PIC)手続:書面再審査で是正されない場合の正式な審理ルートです。
労災の基礎アンカーページ
NSW労災補償の総合ガイド は、週次給付・治療承認・紛争エスカレーションの土台です。まず基礎を押さえた上で、本ページの個別戦略を進めてください。
よくある質問
Section 78通知は最終決定ですか?
最終ではありません。正式な責任判断通知ですが、証拠と手続で争えます。
通知には何が必要ですか?
決定内容、理由、依拠資料、再審査/紛争案内(期限)が必要です。
書面再審査の結果を待ってから PIC を準備すべきですか?
必ずしもそうではありません。給付・治療リスクが高い場合は並行準備が有効です。
なぜ Section 78 の後に給付や治療まで悪化しますか?
責任否認が就労能力・治療必要性の争点と連動するため、三線一体で対応する必要があります。
理由や証拠一覧が不十分な通知なら?
書面回答で補充を明示的に求め、同時に現時点資料で再審査/PIC 用証拠整理を先行してください。
Section 78 はどの法律にありますか?
Workers Compensation Act 1987 ではなく、Workplace Injury Management and Workers Compensation Act 1998(NSW)です。
初回の書面回答は長文である必要がありますか?
長文である必要はありません。実務では、1ページ本文+添付一覧の構成が有効です。争点ごとに通知文の記述、対応証拠番号、不足資料、回答期限を明示し、電話後24時間以内に確認メールを残すと、reviewやPICでそのまま使える記録になります。
法的レビューと週次給付・治療の対応は別スケジュールで進めるべきですか?
通常は分けない方が安全です。1枚の実行表で証拠番号、期限、担当者を共通管理してください。分断すると、反証の整合性が崩れ、reviewやPICで説得力を落とします。
Section 78を受けた当日に作る「証拠レジスター」には何を書けばいいですか?
4列で管理すると実務的です。①保険会社の断言 ②現時点の反証 ③不足資料 ④次アクション(担当者と期限)。当日の書面更新に添付しておくと、reviewとPICで同じ事実軸を維持できます。
次にやること
自分の事案がこのページに近いなら、論点を正しいルートに当てはめてから、証拠補強・通知対応・無料チェックの順序を決めてください。